
クレジットカードの利用履歴や支払い状況は、個人の「信用情報」として記録され、金融機関の審査に影響を与えます。信用情報が良好であれば、クレジットカードの発行やローンの審査がスムーズに進みますが、逆に信用情報が悪化すると審査に通りにくくなり、さまざまな不便が生じます。
本記事では、クレジットカードの信用情報とは何か、どのような行為が信用情報を傷つけるのか、信用情報が悪化した際に生じる影響、そして回復の可能性について詳しく解説していきます。
クレジットカードの信用情報とは?
信用情報とは?
信用情報とは、クレジットカードや各種ローンの契約状況、支払い履歴、借入残高などを記録したデータのことを指します。この情報は、金融機関やクレジットカード会社が、申込者の支払能力を判断する際に利用されます。
たとえば、クレジットカードを利用して毎月しっかり支払いをしている場合、その履歴はポジティブな信用情報となり、今後のクレジットやローン審査に有利に働きます。しかし、支払いの延滞や債務整理を行った場合、その情報はネガティブな信用情報として登録され、新たなクレジット契約が困難になる可能性があります。
信用情報を管理する3つの信用情報機関
日本には、以下の3つの信用情報機関があり、それぞれ加盟する金融機関や登録される情報が異なります。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 主にクレジットカード会社や消費者金融が加盟
- クレジットカードの支払い状況やローン契約の情報を管理
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 消費者金融や信販会社が加盟
- 個人向けのローンやキャッシングの情報を管理
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
- 銀行や信用金庫、信用組合が加盟
- 住宅ローンや銀行カードローンの情報を管理
これらの機関は相互に情報共有を行っており、一つの信用情報機関に記録された事故情報は、他の機関でも確認できる仕組みになっています。
信用情報が傷つく原因
信用情報は、特定の金融事故が発生すると「ネガティブ情報」として登録され、いわゆるブラックリストに載る状態になります。これにより、新たなクレジット契約やローン審査に影響が出るため、注意が必要です。
信用情報が傷つく主な原因には、以下のようなものがあります。
1 クレジットカードやローンの長期延滞
クレジットカードやローンの返済を 61日以上または3カ月以上遅延 すると、信用情報に「延滞」として記録されます。延滞の記録は完済後も 5年間 残るため、その間は新規のクレジット契約が困難になります。
2 債務整理(自己破産・個人再生・任意整理)
借金の返済が困難になった場合に行われる 自己破産・個人再生・任意整理 などの債務整理も、信用情報に影響を与えます。
- 自己破産 は最長 10年間 記録される
- 個人再生・任意整理 は最長 5年間 記録される
債務整理を行うと、ほぼすべてのクレジットカードやローンの審査に通るのが難しくなります。
3 保証会社による代位弁済
住宅ローンやカードローンの返済を滞納すると、保証会社が代わりに返済する 代位弁済 が実行されることがあります。代位弁済が行われると、信用情報には「金融事故」として記録され、 5年間 は消えません。
4 携帯電話の分割払いの未払い
スマートフォンの本体代金を 分割払いで購入 すると、それは ローン契約 と見なされます。そのため、 3カ月以上の未払い が続くと信用情報に「延滞」として記録され、 スマホ本体の分割払いができなくなる 可能性があります。
信用情報が傷つくとどうなる?
信用情報が傷つくと、日常生活にさまざまな影響が及びます。特に、クレジットカードやローンの利用が制限されることで、経済的な選択肢が大幅に狭まることになります。
クレジットカードやローンの審査に通らない
信用情報に事故情報が記録されると、新たなクレジットカードやローンを契約するのが難しくなります。
- クレジットカードの審査が通らなくなる
- キャッシングやカードローンの利用が制限される
- 住宅ローンやマイカーローンの申請が却下される可能性が高くなる
携帯電話の分割払いができない
携帯電話を新しく購入する際、 本体の分割払いが利用できなくなる 可能性があります。その結果、 一括払いで購入する必要があり、経済的負担が大きくなる 場合があります。
賃貸住宅の審査に落ちる
最近では、賃貸物件を契約する際に 家賃保証会社の審査 を受けるケースが増えています。
- 信販系の保証会社 は信用情報をチェックするため、ブラックリストに載っていると審査に通りにくい
- 独立系の保証会社 であれば、信用情報を参照しないため、審査に通る可能性がある
信用情報が悪化すると、日常生活のさまざまな場面で不便が生じるため、支払いの遅延や債務整理をする際は慎重に判断することが大切です。
クレジットカードの信用情報は、個人の支払履歴を記録する重要なデータであり、クレジットカードやローンの審査に大きく影響を与えます。
信用情報が傷つく主な原因は「長期延滞」「債務整理」「代位弁済」「携帯電話の未払い」などであり、一度ネガティブ情報が登録されると、5〜10年間は記録が残ります。
信用情報が悪化すると、新たなクレジットカードやローンが利用できなくなるだけでなく、携帯電話の分割購入や賃貸契約にも影響を及ぼします。
次の章では、信用情報を回復する方法について詳しく解説します。
信用情報の回復方法
信用情報が傷ついてしまった場合でも、一定の期間が経過すれば回復します。ただし、その間はクレジットカードの審査に通らなかったり、ローンを組めなかったりと不便な状況が続きます。ここでは、信用情報が回復するまでの期間や、回復を早める方法、回復を待つ間にできる対策について解説します。
1 信用情報が回復するまでの期間
信用情報機関に登録された事故情報は、 一定期間が経過すると自動的に削除 されます。登録期間は、事故情報の種類によって異なります。
- 長期延滞(61日以上または3カ月以上):完済後 5年
- 任意整理(弁護士・司法書士を通じた借金減額の交渉):和解成立後 5年
- 個人再生・自己破産:最長 10年(個人再生は5~10年、自己破産は7~10年)
- 代位弁済(保証会社が代わりに返済した場合):発生日から 5年
これらの期間が過ぎれば、事故情報は削除され、新たなクレジットカードやローンの審査に通る可能性が高まります。
2 信用情報の回復を早める方法
基本的には、事故情報の登録期間が過ぎるのを待つしかありませんが、以下の方法で信用情報の回復を早められる可能性があります。
事故情報に誤りがある場合は訂正を申請する
信用情報に 誤った情報が登録されている場合 は、信用情報機関に 訂正を申請 することで削除を依頼できます。例えば、完済しているにもかかわらず延滞情報が残っている場合などです。信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に開示請求を行い、誤りがあれば 金融機関に修正を依頼 しましょう。
時効の援用を行う
借金には 消滅時効 があり、一定期間が経過すると返済義務が消滅します。
- 消費者金融やクレジットカードの借金:最終返済から 5年
- 銀行などの金融機関の借金:最終返済から 10年
時効期間が経過している場合、 時効の援用 を行うことで信用情報の回復を早められる可能性があります。ただし、時効の援用には手続きが必要で、金融機関が時効の成立を認めないケースもあるため、弁護士に相談するのが望ましいです。
3 信用情報の回復を待つ間にできること
信用情報が回復するまでの期間、生活に支障が出ないように対策を取ることが重要です。
家賃保証会社の種類を確認し、審査が緩い物件を探す
賃貸物件を借りる際、 信販系の家賃保証会社(JID、オリコフォレントなど)は信用情報を審査しますが、 独立系の保証会社(全保連、日本セーフティーなど)は信用情報を参照しない場合があります。審査が緩い保証会社を利用できる物件を探せば、入居しやすくなります。
クレジットカードの代わりにプリペイドカードやデビットカードを活用する
信用情報が傷ついている間は、 新規のクレジットカードが作れない 可能性が高いため、以下の代替手段を活用しましょう。
- デビットカード(銀行口座と直結して支払いが即時に引き落とされる)
- プリペイドカード(事前にチャージして使用する)
これらは審査不要で作れるため、 オンライン決済や公共料金の支払い に利用できます。
収支を見直し、滞納を増やさないようにする
信用情報の回復には 新たな延滞や金融事故を起こさないこと が重要です。
- 固定費の見直しをして、支出を減らす
- 家計管理アプリなどを活用し、支払期限を忘れないようにする
- 銀行の口座引き落としを利用し、支払い遅れを防ぐ
信用情報が回復した後、スムーズにクレジットカードやローンを利用できるように、 金銭管理の習慣を身につけることが大切 です。
信用情報の回復には時間がかかりますが、適切な対策を取ることで、不便な状況を最小限に抑えることができます。
信用情報回復後のクレジットヒストリーの積み方
信用情報が回復した後、すぐに以前と同じようにクレジットカードを利用できるとは限りません。信用情報機関から事故情報が削除されても、過去に金融事故を起こした履歴があるため、 クレジットヒストリー(信用履歴)をゼロから再構築することが重要 です。ここでは、信用情報回復後にクレジットカードの審査を通過しやすくする方法や、安全に信用情報を改善する方法を解説します。
クレジットカードの審査に通るための準備
信用情報が回復しても、すぐに審査の厳しいクレジットカードや高額なローンに申し込むのは避けましょう。まずは、 審査に通りやすいカードを選び、低額の利用から信用を積み上げる ことが大切です。
審査が通りやすいクレジットカードを選ぶ
クレジットヒストリーがない状態では、一般的なカードの審査に通るのは難しいため、 以下のような審査の緩いカード を選ぶと良いでしょう。
- 流通系クレジットカード(イオンカード、楽天カードなど):比較的審査が優しい
- デポジット型クレジットカード(ライフカードデポジットなど):事前に保証金を預けることで発行可能
- 家族カード(親や配偶者のクレジットカードの追加カード):本会員の信用力で発行されるため、審査が不要
低額の利用を続けて信用を積み上げる
信用情報が回復した後は、 少額の利用を定期的に行い、確実に支払いをすること で信用を築いていきます。
- 毎月 数千円~1万円程度の決済 にとどめ、必ず期日内に全額支払う
- リボ払いは避け、1回払いを基本にする
- 公共料金や携帯料金の支払いに利用し、継続的な取引実績を作る
これを続けることで、半年~1年程度で信用力が回復し、より良い条件のカードが作れる可能性が高まります。
安全に信用情報を改善する方法
クレジットヒストリーを積み重ねる際は、再び信用情報を傷つけないよう、 支払いの管理を徹底 しましょう。
口座振替を活用し、支払い忘れを防ぐ
クレジットカードの支払いを 口座振替(自動引き落とし) に設定しておくと、支払い忘れを防げます。また、クレジットカード以外の固定費(電気・ガス・水道・携帯料金など)も口座振替にすることで、滞納リスクを減らせます。
定期的に信用情報をチェックして回復状況を確認する
信用情報の回復状況を把握するために、 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に情報開示請求を行う ことができます。
- CIC:オンライン開示(1,000円)、郵送開示(1,000円)
- JICC:郵送・スマホアプリで開示(1,000円)
- KSC:郵送開示のみ(1,000円)
信用情報に誤った情報が残っている場合は、 訂正を申し入れる ことで信用力の回復が早まる可能性があります。
まとめ
クレジットカードの信用情報は、 長期延滞や債務整理を行うと悪化し、一定期間は新規のクレジットカードやローンの審査に通らなくなる 可能性があります。ただし、事故情報は5~10年で削除されるため、 時間が経てば信用情報は回復 します。
回復後は、すぐに審査の厳しいクレジットカードに申し込むのではなく、 審査が通りやすいカードを選び、少額の利用を続けながら信用を積み上げることが大切 です。また、 口座振替を活用して支払い遅れを防ぎ、定期的に信用情報を確認する ことで、安全に信用力を改善していきましょう。
焦らず地道にクレジットヒストリーを積み上げることで、将来的に住宅ローンや自動車ローンなどの大きな与信を受けられるようになります。